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呼吸の質と体調 ― 姿勢・自律神経・疲労感との深い関係

私たちが一日に行う呼吸の回数は、およそ2万回以上と言われています。
食事や睡眠以上に繰り返されるこの“呼吸”は、酸素を取り入れ二酸化炭素を排出するという単純な作業にとどまりません。
実は、呼吸の質は自律神経のバランスや姿勢、そして慢性的な疲労感にまで大きく影響しています。
特に30代~50代の女性に多い「なんとなく体が重い」「寝ても疲れが取れない」といった悩みの裏側には、
“浅い呼吸”が潜んでいることが少なくありません。
1. 呼吸が浅くなる現代人の生活習慣
スマートフォンやパソコンの長時間使用、デスクワーク中心の生活は、首や肩を前に突き出した“猫背姿勢”を生みます。
この姿勢では横隔膜(おうかくまく)がうまく動かず、胸式呼吸が主体となり呼吸が浅くなりがちです。
本来、横隔膜を使った「腹式呼吸」は、自律神経を整える副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせます。
しかし、浅い胸式呼吸が続くと交感神経ばかりが働きやすくなり、心拍数の増加・血管収縮・筋緊張といった
ストレス反応が慢性化してしまうのです。
2. 自律神経と呼吸の密接な関係
自律神経は、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)のバランスで体をコントロールしています。
呼吸は唯一、自分の意思でコントロールできる自律神経の入り口です。
たとえば、深くゆっくりと息を吐くと副交感神経が優位になり、心拍が落ち着き、筋肉の緊張もゆるみます。
逆に呼吸が速く浅い状態が続くと、交感神経が優位となり「常に緊張状態」のまま。
これが、慢性的な肩こりや不眠、だるさの大きな原因になっています。
3. 呼吸と姿勢のつながり
姿勢は呼吸の質に直結します。猫背姿勢では肋骨が下がり、横隔膜が十分に下がらないために肺活量が低下します。
これを「拘束性換気障害」に近い状態と表現することもできます。
逆に、背筋を自然に伸ばし、骨盤を立てて座ると横隔膜がスムーズに動き、腹式呼吸がしやすくなります。
つまり、良い姿勢を意識することは「質の高い呼吸」を取り戻す最初の一歩なのです。
4. 呼吸の乱れが引き起こす疲労感
「疲れが取れない」「眠りが浅い」と感じている方は、呼吸の質が低下している可能性があります。
酸素を十分に取り込めないと細胞のエネルギー産生(ATP生成)が不十分となり、慢性的な疲労感につながります。
さらに、呼吸が浅いと体内の二酸化炭素濃度が下がりすぎ、脳血流が減少します。
これが頭痛や集中力の低下、さらには情緒不安定といった不調を引き起こすのです。
5. セルフチェック ―
あなたの呼吸は大丈夫?
以下の項目に当てはまるものが多ければ、呼吸の質が落ちているサインです。
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胸や肩が大きく上下する呼吸になっている
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日中、ため息をつくことが多い
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朝起きても疲れが残っている
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猫背や反り腰と指摘されたことがある
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慢性的な肩こりや首こりがある
6. 改善のためのセルフケア
呼吸の質を改善するためには、以下の方法が有効です。
腹式呼吸の練習
仰向けに寝てお腹に手を置き、息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐くときにへこむ感覚を意識しましょう。
姿勢改善ストレッチ
胸を開き、肩甲骨を寄せるストレッチは横隔膜の可動域を広げ、呼吸をスムーズにします。
就寝前の呼吸リセット
ベッドに入ったら「4秒吸って、6秒吐く」リズムで呼吸を繰り返すと、副交感神経が働き睡眠の質が上がります。
まとめ
呼吸の質は、私たちの体調を大きく左右します。
姿勢の乱れが浅い呼吸を生み、それが自律神経の乱れ、そして慢性的な疲労感へとつながっていきます。
日々の生活で意識的に呼吸を整えることは、薬やサプリメントに頼らずともできるシンプルで強力な健康法です。
「なんとなく不調」が続いている方は、まず自分の呼吸を見直すことから始めてみてください。